あなたの考えは本当に正しいのか?

私たちは自分の持っている考えを基に行動します。 子どもを幸せにするにはしっかり稼がなければいけないので仕事を何よりも優先させる、人と話すのが苦手だから人の多いイベントなどは避ける、あの人は私のことが嫌いだから私も近づかないようにする、などそれぞれの考えや価値観で日々の決断と行動が決まります。 自分の価値観を理解しそれに沿って行動することは大切です。 ただ気をつけなければならないことがあります。 それは、その考えがいつも正しいとは限らないということです。 正しい、とはそれがあなたやあなたの大切な人たちにとってプラスになるかどうか、という観点で話します。 その考えや行動があなたにとって正しいと感じることであったっとしても、実はあなたに関わる周りの人たちにとってはそれはただの思い込みであったり、根本から間違っている場合もあります。 そうであった場合、あなたの行動が空回りになったり、自分や周りを傷つけてしまうことにつながることがあります。 逆に、そのことに気付くことで行動を振り返り、状況を良くすることができます。 以前にも書きましたが、思考は事実と意見からなり、その自分の意見があたかも事実だと捉えてしまうことが多々あります。 そして、その事実でないこと(=思い込み)が現実に起こったりして、それみたことかとやっぱり自分の意見は正しい、と強く信じてしまうことがあります。 でもそれは実はあなたのその思い込みが行動に反映され、事実にさせてしまっている時があるのです。 その、自分の考えを現実化してしまう心理状態のことを自己達成的予言といいます。 何か目標があり信念をもってそれを現実化させることは素晴らしいことですが、根拠のないネガティブな思い込みを現実化させてしまおうとするのは自分自身を追い詰めてしまいます。 今回はその自己達成的予言について、そしてその対処法について書いていきたいと思います。 では、自己達成的予言がどのように起こるのかを見ていきましょう。 まず良い効果をもたらす例から。 ある病状のある患者さんに、特に有効成分が含まれていない薬を治療薬といって飲ませると、その病状が良くなったり副作用が出たりするいわゆるプラセボ効果。 これはその薬が良くしてくれるという期待と信じる思いがその効果を発揮させていると考えられています。 思考→「お医者さんが処方してくれた薬なのだから効くに違いない。」 行動→薬を飲む。 結果→「元気になってきた気がする、薬のおかげだ。」 逆にマイナス効果になってしまう例。 例えば、特定の誰かがあなたのことを良く思っていないとあなたが感じていたとしましょう。 思考→「あの人は私にだけ冷たいからきっと私のことが嫌いなのだろう。」 行動→できるだけその人を避けるようになる。嫌な態度をとってしまうこともある。 結果→相手はあなたの嫌な態度に気分を害し、あなたに近づかなくなる。 思考→「やっぱりあの人は私に対して態度が悪い。私の考えは当たっている。」 実際→相手は実は人見知りで最近知り合ったばかりのあなたに中々話しかけることができず、仲の良い友達ばかりと会話をし、それをあなたは冷たい態度をとっていると解釈した。 そこであなたもできるだけ避けていたら、相手もあなたが良く思っていないと感じ、余計に距離を置くようになる。 そこでもし、あなたの考えが「あの人と仲良くなりたいけど中々私と話してくれないな、もしかしたら初めての人は苦手なのかもしれない。」だったとしたら、あなたの行動はどうなるでしょうか? あなたが仲良くなりたいという願望をもっていて、相手の人見知りの可能性を少しでも感じたとしたら、あなたから話しかけるという行動をとるのではないでしょうか。 そうすると相手との会話がはずむかもしれません。 このように、あなたの考えで起こした行動で相手の思考と行動にも影響していることがわかります。 もちろん、行動を起こして失敗したり期待と違っていたりすることもあるかもしれません。 でも、勝手な思い込みで物事を判断したり、また、誰かの気持ちを決めつけてしまっては、あり得る可能性を見えなくしてしまったり、周りに自分の考えを押し付けてしまうことにもつながります。 あなたが家族の最善を思って仕事を優先させていたけど実は一緒にいる時間をつくることが何よりも家族の幸せだったとか、人と話すのが苦手だと思っていたけど実は特定の誰かと話すことが苦手だけだったとか、思い込みで違う行動が起こせず気付かないでいることは結構あると思います。 自分とはこういう人間でこういう考えをもっている、というスタンスは良いことですが、時に柔軟に考え方を見直すことも、人と気持ち良く関わる上でも、自分が生きやすくなるためにも大切だと私は思います。 ひとつの思考があなたの行動にどのように影響するのか理解し、そしてあなたの行動がどのようにあなたや周りの人たちに影響するのかを考えてみてください。 そして、もしあなたがなんか違うなとか不快な気持ちになるのなら、考えや行動を少し変えてみるのもひとつです。 そうすることで新しいものが見えてきて、そのモヤモヤを解消できるかもしれません。

孤独という寂しさに打ち勝つ方法。~孤独って何?~

私たちは、程度の差はあれ、人生のどこかの時点で孤独を感じることがあります。 特にCOVID-19の流行しているこの時期には、物理的に人と会う事が難しく、多くの人が孤独や寂しさを感じています。 孤独感を感じることは、人とのつながりを本能的に求める私たちにとって自然な現象です。 でもそれが長く続くと心身の健康に害を及ぼすことも多々あるのです。 孤独と心身の健康には関係性があることが、多くの研究によって明らかにされています。 慢性的な孤独は、血管抵抗を上昇させ、肥満、高血圧、脳卒中など特定の病気の発症リスクを高めると言われています。 孤独による寂しさは私たちの精神面にも影響します。 不安でたまらない、抑うつ、睡眠の質の低下、疲労、認知機能の低下、認知症やアルツハイマー病のリスク増加などがあります。 そして、孤独感をあまり感じない人は、孤独感を感じる人に比べて約5.4年長生きすることも報告されています。 では、そもそも孤独とは何でしょうか。 多くの研究者が、孤独とは、個人が求める人間関係と実際にある人間関係とのギャップに対する心理的反応であると説明しています。 つまり、あなたの理想としている人間関係を築けていないと、孤独を感じるということです。 社会学者のロバート・S・ワイスは、孤独感を「感情的孤独感」と「社会的孤独感」の2つに分類しています。 感情的孤独とは、深い人間関係をもっていないことに対する感情をいいます。 社会的孤独は、社会に自分の居場所がなくどこかに属しているという感覚が欠如していることに対する孤独感をいいます。 どちらのタイプの孤独も私たちの健康に影響を与えますが、いくつかの研究では、社会的孤独よりも感情的孤独の方が私たちの心理的健康にはるかに有害であることがいわれています。 また、社会神経科学のパイオニアであるジョン・T・カシオッポは、進化論に基づいて孤独を説明しています。 カシオッポによれば、孤独に感じることは、孤立状態に陥る危険性があるよ、仲間を探さないといけないよ、という心のサインだそうです。 その結果、皆が集まりお互いが協力し合う体制がつくられ、一緒に行動をすることで、社会で生き残ることができるのだそうです。 カシオッポによれば、孤独感は飢えや渇きと同じで、生きるために必要なものを求めさせるものだそうです。 そして、私たちの脳も孤独による寂しさに対して動いています。 他人の視点に立ち共感する役割を担う側頭頭頂接合部という部位が、孤独を感じるとその働きが弱くなるのだそうです。 つまり、孤独を感じると、自分を守ることに集中し、他人の気持ちをあまり考えず、その相手にネガティブな印象を与えるようなやりとりをしてしまうのです。 また、孤独を感じると、社会的なつながりを失うという脅威から、自分を脅かすものをに敏感になり、たとえそれが実在しなくても、あらゆるものを危険因子としてとらえてしまうのです。 そのため、他人と接するときに物事をネガティブに解釈しやすくなり、それによってネガティブな態度をとり、その結果相手が離れていってしまうのです。 このことを自己達成的予言といいます。 偏った予想を現実にするために人は無意識に行動してしまうのです。 例えば、あなたは「自分は面白くないから、誰も友達になりたがらないだろう」と考えているとします。 そして、誰かと会話しているとき、その人が一度だけ腕時計に目をやったとします。 そうすると、あなたは「それみたことか!この人は私のことをつまらないと思ってるから、これ以上話したくないとわからせるために腕時計を見たんだ。」と考え、怒った表情になります。 そして、相手はその態度を、「この人、なんだか嫌そうだな、理由はわからないけどあまり関わらないでいよう。」と考えます。 その自己達成予言による行動のため、他人と接する機会を失い、より孤独を感じるようになるのです。 このように、孤独感は負のループをもたらし、心身のリスクを高める原因となるのです。 カシオッポの理論で私が興味深いと思ったのは、孤独は生きていくために必要な感情だけど、一方で健康を害することもある、というところです。 ということは、私たちの心身の健康や日々の生活に支障をきたさないようにするために、孤独感をいかにうまくコントロールするか、が重要なんだと思います。 次回のブログでは、うまく孤独に対処するために何ができるかを見ていきます。