大切な人を失った悲しみとの付き合い方 ~理解編~

あなたは大切な誰かを亡くしたことはありますか? 人それぞれの違いはありますが、それはあなたの心に強く深い悲しみがとめどなく溢れてくるような、とても辛い経験です。 愛する誰かともう話すこともできない、触れ合うこともできない、と思うと気持ちがえぐられるような感情もでてきます。 そしてその存在があなたにとって大きければ大きいほど、その人の死を受け止めあなたの心が癒えるのには時間がかかります。 また、癒えるどころか逆に精神的に大きなダメージを受け、複雑性悲観(悲しみが終わらず生活に支障がでる)などに発展し、身体的な問題を起こす恐れもあります。 ですが、そのダメージを少しでも抑えるためにできることはあります。 今回はまず、その状況になった時に私たちがどのようにその辛い気持ちと向き合っていくのかを理解していきましょう。 精神的な問題を防ぐ、または解決する為には知ること、理解することが最初の一歩だからです。 喪失による悲しみの課程は、精神医学と心理学の分野で長年にわたって研究され続けています。 その中でも有名で、私自信の経験でもしっくりきたのがスイスの精神科医であったキューブラー・ロスの「悲しみの5段階モデル」です。 彼女は多くの末期患者と接し、自分自身の死を知った彼らがどのような気持ちで死と向き合っていたのかに焦点を置き、医療従事者が死を話題に出さないようにする風潮のある中で、死と死に向き合う人たちの深い気持ちについて研究を続けました。 彼女が提唱した悲しみの課程は、自分自身の死をどのように受け止めていくのかを段階的に説明しています。 さらにそれは自分の死だけでなく、大切な人との死別、または仕事を失ったり、恋人と別れたり、といった他の喪失経験にも当てはまると言われています。 ではその過程を見ていきましょう。 1.否認 辛い事実を初めて突きつけられた時、あまりのショックで受け止めることができず、「そんなはずはない、何かの間違いだ。」とその事実を否認します。 例えば、きっと検査の間違いだと言い聞かせたり、あの人が死ぬわけないと知人からの連絡を信じなかったり、その辛い話題を避けたり、などです。 2.怒り 知らされたショックな出来事が嘘ではないと感じ始めた時、怒りの感情がわいてきます。 「どうして私なんだ。世の中不公平だ!」と怒りを感じ、周囲の人たちにあたってしまう事もあります。 3.取引き 自分ではどうしようもない事が起きた時、神様や仏様などの偶像にどうにかしてくれとお願いしたことありませんか? この「取引き」の段階では、辛い状況を受け入れる恐怖から、自分の状況を変えてもらおうと神様などに交渉やお願いをします。 例えば、「神様、もし私の病気が治るなら今までの不健康な生活はやめて、今まで以上に良い父親にもなります。だからお願いです、私の病気を治してください。」など。 4.抑うつ 自分ではもちろん、誰の力でも太刀打ちできない状況に疲れ、悲しみに覆われる時期。 誰かと接する気にも話す気にもなれずに落ち込んでしまいます。 頑張って生きる事に何の意味があるんだろう、と自らの命を絶つ考えがよぎるほど気持ちが沈むことすらあります。 5.受け入れ 事実を受け入れ、状況をどうにかしようと怒ったりお願いしたりしなくなります。 気持ちは安定し、その事実に対して現実的に対処しようとする時期です。 例えば、自身の余命を受け入れた人が自分のお葬式の準備をしたり、子どもにできる限りの愛情で接したり、資産を分けたり、好きな旅行をしたり、など。 「どうせ私は死ぬんだ。」というよりも「私はもうすぐ死ぬけれど、大丈夫、去る準備はできた。」というように悲しい中でも前向きな気持ちを持てるようになる段階です。 これらの段階は順番に記されていますが、必ずしも順番通りに進むわけではありません。 一度に否定と怒りを経験したり、交渉を飛ばして抑うつの段階になる人もいます。 そして、全ての段階は決して悪い事ではなく、実は深い悲しみを対処するには必要なことだとも心理学では言っています。 例えば、怒りを通して本当の気持ちを知ること、それを無理に抑えず外に出すことで、早く怒りを取り除き気持ちを落ち着かせることができるそうです。 私たち自身を大きなショックから守るため、これらの5つの気持ちや行動はごく自然なことで、誰にでも起こりうることです。 実際にその状況になった時に、自分の気持ちに気付き、それらは自然な事なんだと改めて思うことで、その気持ちをありのまま感じることができ、深い悲しみによる心へのダメージを徐々に癒していくことができるはずです。

あなたを傷つけた相手を許す方法

嫌な事をされた時、辱めを受けた時、傷つけられた時、あなたはその相手を許すことができますか? それとも相手を恨み続けることを心に誓い、相手が不幸になるように祈りますか? 不当な扱いを受けてその相手を許すことは、決して簡単なことではありません。 しかし、「許す」という行為には私たちの精神面を多大に向上させてくれる力があるのです。 多くの研究で、許す行為は不安やうつ症状の軽減と関係しており、さらに、寛容な人たちの方がそうでない人たちより身体的な問題も少ないと報告されています。 逆に、恨み続けるということは、その経験をいつでも意識的に持ってこれる記憶の場所に置いておくということで、その痛みを常に感じていることになります。 そして、起きてしまった事に対して、相手だけでなく自分自身もその原因をつくったのではないかという責任を感じ、自分に怒りを感じ責めてしまうことも多くあります。 そういったストレスを長い間感じていると、精神的なダメージが蓄積され、うつや不安症などの問題に発展することも大いにあるということです。 では、「許す」とはどういうことでしょうか? あんなひどい事をされてどうして水に流してやらないといけないんだ! と、思う人はたくさんいると思います。 しかし、「許す」こと=相手のしたことを大目に見て忘れてあげる、というわけではありません。 また、必ずしも、問題が起きる前の関係に戻る、仲直りをすること、というわけでもありません。 心理学者のマイケル・マッカーラ、エヴェレット・ワ-シントン、ケネス・レイチェルらは「許す」を動機の観点から次のように説明しています。 ・相手に復讐をする気持ちが弱い ・わだかまりのある関係を続ける気持ちがあまりない ・相手への理解と思いやりを持とうとする気持ちが強い ことが「許し」だそうです。 また、「許し」の研究の開拓者であるロバート・エンライトも、「許す」とはただ受け入れて次へ進むための行為だけでなく、傷つけられた相手に対して共感や思いやり、理解を示すことでもあると言っています。 嫌な事をされた相手に思いやりをもつなんて、そんなことできない、いや、したくないと思いますよね。 でもそうすることで、怒りを外に出すことができ、自分自身へのストレスのダメージを軽くすることができるのです。 心理療法士のアンジェラ・バティマ-によると、許すことは私たちの免疫機能の働きを良くしてくれ、セロトニンやオキシトシンなどの幸せホルモンの分泌を促してくれるそうです。 つまり相手のために許すのではなく、自分のために許すのです。 相手にされた理不尽なことを忘れるわけではなく、相手との関係を修復する為でもなく、あなたの怒りと恨みがあなた自身を苦しめるのを止めさせる為に「許す」のです。 それではどうすれば「許す」ことができるのでしょうか。 ◎「許す」とは何かを正しく理解する。 先程も書いたように、許すことは相手のためにやるのではなく、自分の怒りや恨みを取り除いてあなた自身を楽にしてあげるための行為です。 怒りや恨みを持ち続けていると、あなたの痛みがどんどん悪化していきます。 「許す」とは何かを正しく理解することで、あなた自身を痛みから解放するために許そうという気持ちにさせてくれるはずです。 もちろん、「はい、許しました!」と一言で終わらせるほど、心から許すということは単純なものではありません。 自分のために許そうと決めても、やっぱりそれは心地悪くアンフェアに感じるでしょう。 それでも、少しずつでもやる価値はあります。 その為、「許し」はシンプルな行動ではなく、課程だと理解することも大切です。 ◎痛みを感じる。 嫌な事をされたり理不尽な事をされると、私たちは傷つきます。 そして、その痛みを感じるのを私たちは避けようとします。 その行動として、怒ったり、100%相手のせいにしたり、八つ当たりしたり、嫌な出来事を記憶から消そうとしたりします。 これは人間として自然なことです。 ただ、痛みを避け続けるということは、問題に向き合わず未解決のまま放っておくということになります。 それは傷の表面にいったん絆創膏を貼って応急処置をしておき痛みを見ないようにしている状態と同じです。 しかし、そのまま放っておいてはその傷は悪化し、いつでもその傷が開く可能性があるということです。 つまり、許すことができず傷を持ち続けると痛みが増すことになるのです。 そうならないように、起こった事に対して不快な気分があろうとも、できるだけ早い段階で向き合い痛みを感じる事が大切なのです。 そうすることで、「許す」行為を考え始めやすくなります。 もちろん、ひとりでは受け止めきれないような問題に関しては、決して無理せず周りの人たちの力を借りて下さい。 ◎自分を許す。 誰かに嫌な思いをさせられた時、その状況をつくってしまった自分を責めてしまうことは少なくありません。 しかし、起きてしまったことはどうやっても変えることはできません。 そして、物事には私たちの力ではコントロールできないことだってたくさんあります。 もしかすると、あの時あなたがあの行動をとっていなければ、あなたが傷つくようなことは起きなかったかもしれません。 でも、起きてしまったらありのままを受け止め、あなた自身を許してあげてください。 自分を責め続けることであなた自身の心をさらに傷つけてしまいます。 してしまったことを認め、辛い気持ちを切り替えなければ、またあなたが傷つくようなことが起きる可能性も高くなってしまいます。 自分を許してあげましょう。 ◎経験から学び自分を信じる。Continue reading “あなたを傷つけた相手を許す方法”

怒りをコントロールする5つの方法。

怒るって疲れますよね。 怒りたくないのについつい怒鳴っていたり、眉間にしわが寄っていたり、物にあたっていたり。 そんな自分に嫌気がさして悲しくなることもありますせんか。 怒りとは健康的で適切な感情で、誰もが抱く感情です。 しかし、怒りは時に周りの人たちや自分自身を過度に苦しめる行動を起こしてしまうことがあります。 その場合、怒りは私たちにとってマイナスで危険な感情になります。 では、どうして人は怒るのでしょうか? それは、二つの心理的要素が合わさって引き起こされています。 一つ目は傷つくのを避ける心理です。 怒りは二次感情といわれ、悲しい、屈辱、イライラする、恥ずかしい、不安、後悔などの一次感情が引き金となっています。 その一次感情を素直に受け止める事はとても傷つく事で、人はそれを避けようとします。 怒ることで、自分にとってのマイナスな感情と向き合わずに済み(その場しのぎですが)、傷つかずにすみます。 そして二つ目は、あなたが誰かに攻撃されてしまう、自分が追い詰められてしまうという解釈です。 すると、防衛本能が働き、相手を怒りで攻撃して自分の身を守ろうとします。 いわゆる闘争・逃走反応のひとつです。 このように、向き合う事で傷ついてしまう感情と周りからの脅威があるという解釈が私たちを怒らせているのです。 怒りを誰かや何かにぶつけることで自分を守ることができます。 しかし、それはその場しのぎでしかならず、さらに、怒る事が習慣化されていると、あなたの身体面(免疫機能の低下、睡眠不足、高血圧など)や精神面(ストレス、うつ病など)、そして人間関係に悪影響を及ぼします。 怒る事で一瞬スッキリしますが、怒りを感じている自分によりはっきりと気付き、さらに腹が立ってしまいます。 怒る事はあなたをさらに引火させてしまい、最終的にはあなた自身が疲れ燃え尽きてしまいます。 そうならない為にどうすればいいのか、アンガーマネジメントの方法をみていきましょう。 まず初めに、アンガーマネジメントは怒りを消す方法でも怒りをあなたの中にためておく方法でもありません。 上手く怒りをコントロールし、自分や周りを傷つけずに怒りの気持ちを表現することです。 ◎ 怒りの原因である一次感情が何かを知る。 怒りは二次感情で怒るにはその原因があります。 それを解決しない事には、その問題に関する状況になると常に怒りが沸いてきてしまいます。 例えば、あなたが中々就職できずに悩んでいるとします。 そこで親から「仕事は決まったの?」と聞かれたり、友人が楽しそうに仕事の話をしているのを聞いたりすると、必要以上に腹が立ってきます。 その怒りをコントロールするには、仕事が決まらずにイライラしている、焦っている、もしくは悲しんでいる自分に気付くことです。 そしてそれがあなたを怒らせている原因であることに気付きましょう。 そうすることで、怒るかもしれない状況にも気付くことができ、それが怒りの感情の抑止力になります。 ◎ 「~すべきだ」という自分のルールを変える。 私たちは自分の育んできた価値観で物事を判断します。 価値観をもつことは生きていく中で必要なことですが、あまりに頑なに決めてしまうと、多くの場面で思い通りにならずに不快な気持ちになり、その結果怒りに発展してしまいます。 人は、自分は~すべきだ、というルールを持っているなら、少し言い方を変えましょう。 例えば、人は話すときちゃんと目を見て話すべきだ、というルールをあなたが持っているとすれば、もし誰かが目を合わせずにしゃべっていたらイラっとしてきます。 でも、目をじっと見る事は良くないと教えられている文化もあり、また、恥ずかしくて目を合わせられない人だっています。 だから、「~すべき」というフレーズを取り除いて、「話すとき目を合わせる事も大切だけど色々な理由で合わせない、もしくは合わせられない人もいることを尊重しよう」というように変えてみましょう。 柔軟性をもつことで、誰でもないあなた自身が楽になります。 ◎ 誰かに話す。 誰かに話を聞いてもらう事は、怒りを外に上手く出す方法の一つです。 腹が立つことが起きても、どうしてもその場で言える状況ではなかったりすることはたくさんあると思います。 そんな時は友人や家族、あなたが信頼をおける人にあなたの気持ちを聞いてもらいましょう。 少しでも怒りを外に吐き出しあなたの気持ちを話すことで、状況を客観視でき冷静になることができます。 ただし、興奮のあまり、聞いてもらう相手に八つ当たりしないよう注意してくださいね。 ◎ 求めすぎない。 不快な気持ちになる原因の中には実は仕方がないことがたくさんあります。 例えば、子どもがジュースをこぼしてしまう、パートナーがあなたの話を聞きそびれた、友達が約束をすっかり忘れてしまっていた、などは、故意にあなたを困らせようとしているわけではありません。 私たちは完璧ではないので、人生の全て、細かく言えば、日々のひとつひとつの行動を100%思うようにこなすことは不可能です。 さらに、それを相手に求めるのは現実的ではありません。 関係の深い間柄なら特に、相手に期待を寄せてしまいがちですが、求めすぎるとそうでない結果になった時、嫌な気持ちになり怒りが沸いてきます。 あなたにもあるように、相手にも失敗やできないことはあります。 誰のせいでもないことはしょうがない、とあきらめましょう。 怒るだけ無駄です。 ◎ リラックス方法Continue reading “怒りをコントロールする5つの方法。”