セルフ・コンパッションとは? ~自分への思いやりを高める方法~

以前、セルフ・コンパッションをもつことで自分を非難することが少なくなる(「自分を責めることをやめる方法」)と書きました。 セルフ・コンパッションは自分への非難だけではなく、全体的に精神面に良い効果をもたらし、日々の生活を楽しくしてくれます。 セルフ・コンパッションとは自分への思いやりという意味です。 セルフ・コンパッションを研究し、その開拓者であるクリスティン・ネフさんは次のようにその言葉を定義しています。 あなたにとって大切な誰かが悩んでいる時にあなたが相手を心配し思いやるように、あなたが問題を抱えているときも同じように自分自身を思いやりいたわってあげること。 私たちの多くは、人を思いやることは大切である、と教えられて育ってきています。 でも自分自身を思いやってやれ、というようなことはあまり聞かなかったのではないでしょうか。 だから人には自然と優しくできるけど、同じ状況が自分に起こった時は、私はダメな奴だ、と厳しく非難してしまう。 しかし、辛い時にこそ自分に思いやりをもって接することが大切なのです。 自分を大切にすることは、心身の健康を良好に保つことにつながります。 そのため、セルフ・コンパッションを持っている人は、運動をする、体にいいものを食べる、体調が悪ければ無理せずお医者さんに診てもらう、身だしなみを整える、ストレスへの対処法をもっている、、といった行動を日頃から心がけようとする傾向があります。 他の人にもしてあげるように自分自身に優しくすることで、ストレスによる嫌な気持ちをうまく処理でき、心も体も生き生きさせることにつながるということです。 ネフさんによると、セルフ・コンパッションがあると、目標に向かってのモチベーションを「今の私は不十分だから変わらなくちゃ。」というものではなく「楽しく生きるために、今の自分を向上させるためにもっと良くなろう。」というもっと前向きなものになるそうです。 そうだとわかったら、自分に優しく思いやりをもった方が得ですよね。 実際にどのように優しくすればいいのでしょうか? ネフさんは、セルフ・コンパッションは3つの要素があると言っています。 それに基づいて、自分への思いやりを高められる方法を見ていきましょう。 1.自分への優しさ。 私たちは自分自身のことになると、途端に厳しくなり、何か問題に直面すると、私はこんなこともできないのか、また人に迷惑をかけてしまった、など自分を責め、さらに落ち込んでしまいます。 しかし、同じようにあなたの大切な人に対して同じようなことを言って責め立てる事はまあ少ないでしょう。 優しい言葉をかけ、励まして元気づけようとする方が多いのではないかと思います。 その言葉や相手を想う行動があるから、その相手は勇気づけられ前を向くことができます。 つまり、自分を責めたくなるような状況でも自分に優しくなろうよ、ということです。 もしあなたが「私はこんなこともできない価値のない人間だ。」と自分自身に言っているのなら、「今回は失敗してしまったけど次はちゃんとできるようにしっかり準備しておこう。大丈夫、私ならできる。」というような、起きたことは批判せず受け止め、あなたを励ます言葉をかけてください。 自分自身にも大切な誰かにするのと同じように接してあげることで、問題があって落ち込んだとしても、過度に自分をいじめずストレスも軽くなります。 2.人と共通するもの。 辛いこと、悲しいことが起きた時、なぜ私だけこんな仕打ちを受けないといけないんだ、と思うことありませんか? 私は多々あります(笑)。 でも、ネフさんはこう言っています。 辛い目に合うのは私たち人間ならみんなが経験するもので、決してひとりではない。 欲しいものが手に入らなかったり、失敗したりする経験は地球上の人みんなが経験している。 だから嫌なことや辛いことが起きるのは自然なことで、あなたが特別だからじゃないんです。 私だけ、と思うことで自分を孤立化させストレスをより強いものにしてしまいます。 みんな同じなんだ、それぞれの状況、それぞれのタイミングで辛い思いをしているんだ、と知りましょう。 そうすることで、孤独感を減らし、じゃあどうすればいいのか、と解決するために考える力をくれるはずです。 3.マインドフルネス。 マインドフルネスとは今の状況を善し悪しをつけずにありのまま受け入れることです。 嫌なことがあって辛い気持ちになったら、それを強調も抑制もすることなくありのままを受け入れよう、ということです。 なぜなら辛い気持ちを無視して自分に優しく接することはできないからだとネフさんは説明しています。 辛い気持ちを必要以上に強く捉えることは、感情的になり物事を客観的にみることができなくなってしまいます。 例えば、嫌なことがあった時にその悲しい気持ちを、私にはどうすることもできない、もう終わりだ、と解釈してしまうと、解決法を探るどころかそこで行き詰まり、ネガティブな考えの深みにはまっていってしまいます。 だから、その感情を無理に抑える事も強調することもせず、これは人なら誰もが感じるものなんだと、特別なものとして扱わずにありのままに感じましょう。 辛い気持ちを受け止めるのは言うほど簡単ではないし心に負担がかかります。 でも、その後に引きずらなくて済みます。 嫌な気持ちを受け止めずに軽視していると後になって心の問題となって出てきます。 しかもその時以上に複雑で重いカタチになって。 自分を思いやるには、まず自分のために嫌な気持ちでもそのまま冷静に受け止めることが大切です。 難しい状況に直面し、ストレスを感じ気持ちが辛くなったら、自分の非ばかりを挙げるのではなく、客観的に物事をみて自分自身に優しく接した方が心が楽チンです。 人に優しく、そして自分にも優しく。

なりたい自分になる方法。パート3 ~脳の仕組み編~

私たちは年を重ねていくと脳の働きが衰え、若いころのように物事を学びそれを吸収することは難しくなると思っています。 でも朗報です。 新しい研究がそれを塗り替えました。 実は、年齢に関係なく私たちの脳は成長し、新しい技術や知識を取り込むことができるのです。 それは神経可塑性という、脳が経験によって変化適応し、成長し続ける能力のおかげです。 もちろん、若い時の脳の方が経験に敏感で反応も早いですが、脳を鍛えていれば、年齢が若い人たちよりも環境に柔軟に対応できるということです。 素晴らしい能力だと思いませんか。 脳の成長は20代やそこらで止まってしまうと思っていた私には目からうろこでした(笑)。 脳は新しい経験によって新しい神経の回路をつくり成長し続けるのです。 そしてその脳の適応力と再生能力のおかげで、考え方や行動を変えることができるのです。 もしあなたが今、物事を全てネガティブに捉えて悩まされていたり、ストレスに不健康な方法(例えば過剰飲酒や暴飲暴食、自分や他人を必要以上に責めるなど)で対応し、さらにストレスを抱えてしまっていても、それらを自覚し変えようとすれば、変わることができるのです。 私はもう年だから、私はこういう人間だから、私には悪いことしか起きないから、などの言い訳はもう通用しないってことです。 ただし、脳は刺激をもらわないとそのまま何も変わりません。 いい刺激を与えて再生能力を向上させましょう。 どういう事をすればその神経可塑性というものは向上されるのでしょうか。 ◎ 集中できること、新しいこと、挑戦できることをする。 これらの要素は脳に良い刺激を与えてくれます。 例えば、読書、新しい言語を学ぶ、楽器を習う、旅行する、絵を描く、音楽をつくる、などは神経可塑性を向上させてくれると言われています。 自分にとって新しいことや、少し難しいけどやりがいのあることは脳にも良く、私たちの気持ちも考え方もポジティブに変えてくれます。 ◎ 運動をする。 体を動かすことはどの研究を読んでも身体面、精神面にプラスの効果を与えてくれると報告されています。 運動すると、脳細胞の成長と回復を助ける神経栄養因子というたんぱく質の分泌が増えます。 そしてそれらが活発になれば、記憶力と学習力アップにつながり、認知力の低下を抑える効果があるそうです。 体を動かすとストレスによる緊張状態も緩和してくれ、すがすがしい気持ちにもなります。 定期的に運動をすることで、脳が元気になり体も心も強くなります。 運動が苦手なあなたもちょっとだけでも体を動かしてみませんか? ◎ 睡眠の質を上げる 神経細胞の先にある樹状突起は神経から神経に情報を送る大切な部分です。 それらは寝ることで強化されます。 その為、学習したものは睡眠をとることで私たちの記憶になっていくのです。 よく、寝る前に読んだものや勉強したことはよく覚えている、と言われますが、これもそのひとつの理由なのです。 なので、睡眠の質をあげることは大切です。 これは精神面にも大きく影響します。 睡眠不足、または睡眠過剰はうつ病や不安症などの心の問題を抱えている人たちによくみられます。 睡眠の質を上げて神経可塑性を向上させ、心のストレスも軽くしましょう。 睡眠の質を上げるためには、就寝時間を大体同じ時間帯にする、寝る直前までスマホをいじらない、寝る前にカフェインやアルコールをとらない、ストレッチをする、運動する、昼寝をし過ぎない、寝る部屋はリラックスできる環境にする、などがあります。 脳を元気にキープするためにしっかり寝てください。 ◎ マインドフルネス マインドフルネスとは今この瞬間に集中し、ありのままを受け入れることをいいます。 マインドフルネスは、記憶やストレスに関する脳の構造に良い変化をもたらしてくれる、と多くの研究で証明されています。 さらに年齢による認知能力の低下のブレーキになるとも言われています。 マインドフルネスになることで心身ともに良い効果が期待できます。 マインドフルネスをすることで何が良いのか、そしてどのようにすればいいのか、は「マインドフルネスでストレス発散」の記事へ。 神経可塑性を向上する為の行動は、結果、私たちの精神面にも良い行動となっています。 そして、自分を思うように変えられるのです。 つまりなりたい自分になれます。 やらなきゃ損ですよ。

不安を和らげる5つのリラックス方法

不安な時、私たちの体は緊張していて固まってしまっています。 「人の目を気にしない5つの方法」でも言ったように、心と体はつながっていて、硬くなった体をほぐすことで心の緊張もほぐすことができます。 ここで紹介するリラックス方法は練習すればするほど不安を和らげる効果があります。 忙しくてやってられない、と言う方もいると思います。 でも、不安な気持ちは私たちの生活を妨害します。 そうなる前に不安を和らげるテクニックを身につけましょう。 1.深呼吸 4・7・8 深呼吸はどこでも手軽にできるリラックス方法です。 まず、ゆったりとした楽な姿勢で座ってください(立ったままでもできます)。 次に、おなかの上に、両方の手のひらをかぶせるように優しく置いてください。 そして、鼻から空気を4秒間数えながらゆっくり吸い込みます。 この時に吸い込んだ空気でお腹がふくらんでいくのを感じます。 鼻から空気を吸い込んだらそこで7秒間息を止めます。 そして最後に口から8秒間かけて口から息を吐きます。 この時、口笛を吹くようなイメージで息を優しくゆっくり吐き出していきます。 そして、息を吐くと同時におなかのふくらみがなくなっていくことを感じましょう。 これを数回もしくは3~5分程続けます。 深呼吸は、寝る前に行うことで眠りに入りやすくなる効果もあるので、心が落ち着かず寝にくい方は一度試してみてください。 2.誘導イメージ法 このリラックス法は、あなたにとってポジティブで落ち着く場面を想像することで気持ちを和らげるものです。 不安な時に想像することはネガティブなことが多く、それがさらに不安を煽ってしまいます。 起こってもいないのに。 なので、逆に良い事や気持ちを落ち着かせる場所を想像して、リラックスしましょう。 まず、あなたが心地良いと思う場所を想像してください。 例えば、透き通った海が目の前に広がる真っ白な砂浜を歩くあなたの姿。 鳥の鳴き声が心地良く響き渡るマイナスイオンたっぷりの森林の中。 もしくは冬の寒い朝にベッドの中でふわふわの毛布にくるまれている。とか。 想像できたら、あなたの感覚全てを使ってその想像の世界を感じてください。 あなたの周りには何が見えますか?また、遠くには何がありますか?(視覚) どんな音が聴こえますか?強い音ですか?それともかすかな今にも消えそうな音ですか?(聴覚) あなたは何か食べたり飲んだりしていますか?もしそうならそれはどんな味ですか?(味覚) あなたの体はどんな風に感じていますか?寒いですか?それとも暑いですか?(触覚) どんなにおいがしますか?そこの空気の香りはどんなものですか?(嗅覚) その心地良い場所をとことん想像してみてください。 3.プログレッシブ・マッスル・リラクゼーション(進行性筋弛緩リラクゼーション) この方法は、緊張状態を自ら作り出してからリラックスすることで、リラックス状態がいかに心地良く緊張状態との差があるかに気付くものです。 この方法でリラックスすることで、不安な時、無意識に体がこわばっていることに気付き、そこで意図的に力を抜けるようになります。 やり方は、まずあなたの楽な姿勢で座る、もしくは寝転んでください。 次に、体の筋肉を順番にひとつずつ、力を入れて緊張させて約10秒間そのままの状態を保ち、その後一気にその力を抜きます。 その後、リラックス状態のまま約10~20秒過ごします。 そして、次の筋肉に移動します。 筋肉の順番は足の方から始め、頭の方に徐々に進んでいくイメージです。 どのように力を入れるかそれぞれの部位で簡単に説明します(↓)。 足:力を入れてつま先を曲げる。 ふくらはぎ:膝から下の足を上げつま先をピンと前に出すように力を入れる。 太もも:二つの太ももを押し合うようにして力を入れる。 おなか:おなかの中心にフンッと力を入れる。 背中:肩甲骨を背中の中心に近づけるようにして力を入れる。 肩:グーッと縮こませながら耳の方まで持ち上げる。 腕:こぶしを作りその力を腕を通して肩まで送るようにする。 手:またこぶしを作り指にも力を入れる。 顔:顔のパーツを中心に持ってくるイメージで力を入れる。 全身:最後に全身に力を入れる。 それぞれ全て約10秒間緊張させた後、ダランッと一気に力を抜きましょう。 このリラックス法は15~20分ほどでできるものです。Continue reading “不安を和らげる5つのリラックス方法”

マインドフルネスって何?

マインドフルネスとは今の一瞬一瞬に心を向け、今起きていることをありのままに受け入れることです。 マインドフルネスと聞くと、座禅をくんで呼吸を意識するようなちゃんとした瞑想をしなくてはいけない、と思われがちですが、実際はあなたが心をそのことにだけ集中できることであれば、特に決まりはありません。 もちろん、お酒やたばこ、ギャンブルなどは、結果的に身体・精神面に害を与えてしまうこともあるので、マインドフルネスの行為としては避けましょう。 今起きていることをありのまま受け入れるその行為は、私たちの心身に良い効果をもたらしてくれることが実証されています。 マインドフルネスは、 ◎悲観的・否定的な考えに思いを巡らす時間を減らしてくれる。 今に集中することで、答えの出ない事や辛くなることに考え込む時間が減ります。 ネガティブな考えはあなたをどんどん追い詰めてしまいます。 その時間とエネルギーを今に費やすことで心が軽くなります。 ◎ストレスを軽減してくれる。 今起きている事に心を集中させることは、自分の気持ちをコントロールできることにつながります。 気持ちをコントロールできると、ストレス要因になるようなことが起きた時に、感情的に反応せず落ち着いて対応できます。 そうすることで、ストレスに反応したネガティブな感情でさらにストレスが増すこともありません。 ◎身体的にも良い効果をもたらしてくれる。 病気そのものを治す効果は残念ながらありませんが、慢性的な病気などからくる精神的な負担を軽くする効果は実証されています。 研究によると、心臓の持病、癌、慢性の腰痛持ち、などで起こる精神的な問題で多く共通しているのは、不安症とうつ症状です。 それらの精神的症状は病状をさらに悪化させ、QOL(生活の質)、特に健康にする質(HRQOL)を下げます。 マインドフルネスは不安症とうつの症状を軽くし、QOLは高められることが報告されています。 つまり、病状を悪化するのを防ぐ役割を果たしてくれるのです。 ◎ 自分の心身の状態を知らせてくれる。 マインドフルネスの状態の時、私たちは五感をフル活動させています。 その為、体で受ける刺激(におい、味、感触、視覚、どのように音が聴こえてくるか、など)でいつもと違う体の反応などに気付いたり、心地よい感覚(花の良い香りや滑らかな舌触りなど)をいつもより強く感じる事でより一層いい気分になれます。 普段当たり前にしていることは、何かを考えながら、何かをしながら、がほとんどだと思います。 例えば、テレビを観ながらご飯を食べる、音楽を聴きながら運転する、誰かと話しながら次の約束のことを考える、などなど。 それでは常に頭が外の活動にとらわれてしまい、自身の中に気を配る事ができません。 今していることだけに心を向けることは、私たちの心身の状態を知り、気持ちを向上させることにつながるのです。 マインドフルネスのコツは五感をつかって、その事だけに集中することです。 例えば、ごはんを食べるとき、静かな場所を選び、そのごはんの匂いをかぎ、触感がどんなものなのか、味は甘いのか酸っぱいのか辛いのか、後味はどうなのか、など、とにかく五感が感じるもの全てに敏感になってそのままを受け止めてみましょう。 集中するために利き手と逆の手で食べてみてもいいかもしれません。 あなたがマインドフルネスになれるかもしれない活動例イロイロです(↓)。 できそうだな、と思う事をやってみてください。 食べる 水(コーヒー、紅茶etc.)を飲む 運転 散歩 シャワー 掃除 片付け ベッドや布団を整える 洗濯物を干す 読書 深呼吸 ボディスキャン(体の各部位に神経を集中させて状態を感じる) 自然の風景を眺める ヨガ 筋トレ ジョギング ストレッチ 塗り絵 気持ちを書き留める 他にもあなたが日常でやっている事や、やりたいと思っている事あると思います。 色々試して効果が感じれたものを続けてみてください。