ストレスが体に与える影響とは?

前回、ストレスと痛みの関係について書きました。

ストレスは体の様々な部位で痛みを感じる原因となり、心と体が密接につながっていることがわかりました。

今回は、ストレスが私たちの体に与える影響を見ていきたいと思います。

前回のブログでも書きましたが、アメリカ心理学会によると、慢性的な精神的ストレスは、筋骨格系、呼吸器系、心血管系、消化器系、神経系、生殖器系、内分泌系に影響するそうです。

 筋骨格系

ストレスを感じると、私たちの筋肉は緊張でこわばります。

これは、あなたにとっての脅威から身を守るために自然となる攻防体制です。

少しの間の緊張感であれば問題ないのですが、慢性的に体がこわばっているとリラックスすることができず、首や肩に力が入り頭痛や腰痛に発展してしまいます。

 呼吸器系

ストレスを感じると呼吸が早くなったり、酸素が足りないような上手く呼吸ができない感覚に陥る時ありませんか?

それらは「闘争・逃走反応」といって自分を守るために闘う、もしくは逃げる準備をしていて、その為に酸素がいつも以上に必要になるからです。

ストレスが一時的に弱まり落ち着きを取り戻すと、私たちの体もリラックスしようと働き、呼吸も通常通りに戻ります。

しかし、元々ぜんそくや慢性閉塞性肺疾患(以前は慢性気管支炎と呼ばれていた)などの呼吸器系の病気を持っている人たちがストレスを感じると、その病状が悪化する可能性が高いと言われています。

そういった症状を持っていなくても、呼吸が苦しい、このままでは倒れてしまうかもしれないという感覚はパニック障害を引き起こすことがあります。

パニック障害はその時だけでなく、特に呼吸に問題がないときでも「次にパニックになったらどうしよう」「息ができなくなったらどうしよう」など不安な気持ちでさらにストレスを抱えてしまうことにもなります。

 心血管系

びっくりするようなことや、一時的にプレッシャーを感じるような急性のストレスは心臓の鼓動を速くし、心臓の筋肉をぎゅっと引き締めます。

そして、その心臓の働きを支えるために血液の量が増える一方で、コルチゾールなどのストレスホルモンにより血管は収縮するので、一時的ですが血圧が高くなってしまいます。

例えば、運転中に人が急に飛び出してきて急ブレーキを踏んだとき、仕事の締め切りがギリギリで間に合うのかわからないと感じるとき、など。

そういったチャレンジングな出来事が過ぎると、バクバクしていた心臓は正常の速さに戻り、血圧も元に戻ります。

しかし、慢性的なストレスになると、そういった状態が繰り返されることになり、高血圧、心臓発作、脳卒中の危険性が高まると言われています。

 消化器系

ストレスを受けると消化器系と脳の伝達がうまくいかなくなり、痛みや膨満感、その他の不快な症状が現れることがあります。

消化器系は「第二の脳」と呼ばれるほど、脳と密接な関係にあります。

消化器系の臓器には数百万もの細菌が住んでおり、それらは体の健康、そして脳(=心)の健康に影響を与えるのです。

インド、ハイデラバードで消化器専門医を務めるラフル・ドゥバッカによると、それらの細菌が変化しバランスが崩れたり、消化器官内での炎症、消化器官と脳との伝達経路で起こる何らかの障害などが、私たちの心にもダメージを与えるそうです。

さらにそれが不安症やうつ病に発展することもあるそうです。

消化器官の不調が心に影響を与えるように、精神的なストレスも消化器官にマイナスの影響を与えます。

例えば、通常バリアとして機能している腸の壁の粘膜に穴が開いてしまい、腸内にある未消化の食べ物や毒素が血管に漏れてしまうリーキーガット症候群という症状を引き起こすこともあります。

(※ストレス以外にも過度の飲酒、栄養素の欠如などその原因は他にもあります。)

リーキーガット症候群の症状として、膨満感、腹痛、気分のムラ、元気が出ない、肌の不調、などがあり、さらに心に負担をかけてしまいます。

このように、消化器系は心の健康と深くつながっており、お互いに影響し合いやすい関係と言えます。

 神経系

私たちの自律神経は交感神経と副交感神経に分かれています。

ストレスを感じるようなことが起きると、交感神経は体内のエネルギーを分散させ、ストレスや脅威に対して闘うため、もしくはそれらから逃げるための「闘争・逃走反応」の準備をします。

その過程で分泌されるアドレナリンとコルチゾールの働きで鼓動が速くなったり、腕や足の血管の拡張や血糖値の上昇などが起き、緊急事態(=ストレス)に対応しようとするのです。

ストレスや脅威を感じる状況がおさまると、副交感神経が体をリラックスさせ通常の体の状態に戻してくれます。

ただし、長い期間繰り返されるようなストレス、つまり処理できないストレスを常に感じていると、自律神経もストレス反応を繰り返すことになり、体は疲れ切ってしまいます。

そしてその体の疲れは気持ちも弱くしてしまうことになり、ストレスへの対応がさらに難しくなります。

 生殖器系

アメリカ心理学会によると、前年にストレスを感じる出来事を2つ以上経験した男性の精子は、ストレスを感じる出来事がなかった人たちのそれよりも、生命力が弱く、その大きさや形が正常なものが少ないのだそうです。

女性の場合、ストレスによって、月一度の月経が無くなったり、そのサイクルが毎回違うなどの月経不順を起こしたり、月経前症候群の症状がいつもよりひどくなることがあります。

また、受精する力、妊娠中の健康、産後環境への適応などにストレスはマイナスの影響を及ぼすそうです。

 内分泌系

ストレスを感じたとき、内分泌系はグルココルチコイドという副腎皮質ホルモンの分泌を促します。

その中の一つのコルチゾールというホルモンは、ストレスホルモンと呼ばれ、ストレスに負けないように体内のエネルギーをつくる役割をします。

コルチゾールは視床下部と下垂体と副腎皮質系の3か所がコミュニケーションをとって分泌され、ストレスに対応しようとます。

そして、その働きによって体中のストレス症状が引き起こされるのです。

この記事でもふれた、筋肉の緊張、「闘争・逃走反応」、血管の収縮、生殖器への影響など、体全体のストレスによる症状にそのホルモン分泌が関わっています。

また、コルチゾールには抗炎症作用があり、外からの細菌やウイルスを排除する免疫機能が引き起こす熱や腫れなどの炎症を抑える働きをしてくれます。

このように、コルチゾールは私たちの体には欠かせないものなのですが、その分泌量が常に高い状態になってしまうと、ストレス症状が続くことになり、体に負担がかかってしまうことになります。

インドにあるカウベリー病院の情報によると、ストレス状態が数日で終わるならまた元の健康状態に戻してくれますが、数週間以上の長い間ストレスを感じ続けるとコルチゾールの分泌が過多になり、倦怠感、免疫系の病気、うつ病などに発展する可能性があるそうです。

精神的ストレスの影響は体のあらゆる部分でみられます。

あなたが感じる体の異変は精神的なものが原因かもしれません。

体がいつもと違う不快な状態が長く続くと、それが心の疲れにもつながることになり、悪循環をもたらしてしまいます。

その悪循環になる前に、もしくはそこから抜け出すためにストレスに対処しセルフケアをしっかりとすることが大切です。

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