嫌な事をされた時、辱めを受けた時、傷つけられた時、あなたはその相手を許すことができますか?
それとも相手を恨み続けることを心に誓い、相手が不幸になるように祈りますか?
不当な扱いを受けてその相手を許すことは、決して簡単なことではありません。
しかし、「許す」という行為には私たちの精神面を多大に向上させてくれる力があるのです。
多くの研究で、許す行為は不安やうつ症状の軽減と関係しており、さらに、寛容な人たちの方がそうでない人たちより身体的な問題も少ないと報告されています。
逆に、恨み続けるということは、その経験をいつでも意識的に持ってこれる記憶の場所に置いておくということで、その痛みを常に感じていることになります。
そして、起きてしまった事に対して、相手だけでなく自分自身もその原因をつくったのではないかという責任を感じ、自分に怒りを感じ責めてしまうことも多くあります。
そういったストレスを長い間感じていると、精神的なダメージが蓄積され、うつや不安症などの問題に発展することも大いにあるということです。
では、「許す」とはどういうことでしょうか?
あんなひどい事をされてどうして水に流してやらないといけないんだ!
と、思う人はたくさんいると思います。
しかし、「許す」こと=相手のしたことを大目に見て忘れてあげる、というわけではありません。
また、必ずしも、問題が起きる前の関係に戻る、仲直りをすること、というわけでもありません。
心理学者のマイケル・マッカーラ、エヴェレット・ワ-シントン、ケネス・レイチェルらは「許す」を動機の観点から次のように説明しています。
・相手に復讐をする気持ちが弱い
・わだかまりのある関係を続ける気持ちがあまりない
・相手への理解と思いやりを持とうとする気持ちが強い
ことが「許し」だそうです。
また、「許し」の研究の開拓者であるロバート・エンライトも、「許す」とはただ受け入れて次へ進むための行為だけでなく、傷つけられた相手に対して共感や思いやり、理解を示すことでもあると言っています。
嫌な事をされた相手に思いやりをもつなんて、そんなことできない、いや、したくないと思いますよね。
でもそうすることで、怒りを外に出すことができ、自分自身へのストレスのダメージを軽くすることができるのです。
心理療法士のアンジェラ・バティマ-によると、許すことは私たちの免疫機能の働きを良くしてくれ、セロトニンやオキシトシンなどの幸せホルモンの分泌を促してくれるそうです。
つまり相手のために許すのではなく、自分のために許すのです。
相手にされた理不尽なことを忘れるわけではなく、相手との関係を修復する為でもなく、あなたの怒りと恨みがあなた自身を苦しめるのを止めさせる為に「許す」のです。
それではどうすれば「許す」ことができるのでしょうか。
◎「許す」とは何かを正しく理解する。
先程も書いたように、許すことは相手のためにやるのではなく、自分の怒りや恨みを取り除いてあなた自身を楽にしてあげるための行為です。
怒りや恨みを持ち続けていると、あなたの痛みがどんどん悪化していきます。
「許す」とは何かを正しく理解することで、あなた自身を痛みから解放するために許そうという気持ちにさせてくれるはずです。
もちろん、「はい、許しました!」と一言で終わらせるほど、心から許すということは単純なものではありません。
自分のために許そうと決めても、やっぱりそれは心地悪くアンフェアに感じるでしょう。
それでも、少しずつでもやる価値はあります。
その為、「許し」はシンプルな行動ではなく、課程だと理解することも大切です。
◎痛みを感じる。
嫌な事をされたり理不尽な事をされると、私たちは傷つきます。
そして、その痛みを感じるのを私たちは避けようとします。
その行動として、怒ったり、100%相手のせいにしたり、八つ当たりしたり、嫌な出来事を記憶から消そうとしたりします。
これは人間として自然なことです。
ただ、痛みを避け続けるということは、問題に向き合わず未解決のまま放っておくということになります。
それは傷の表面にいったん絆創膏を貼って応急処置をしておき痛みを見ないようにしている状態と同じです。
しかし、そのまま放っておいてはその傷は悪化し、いつでもその傷が開く可能性があるということです。
つまり、許すことができず傷を持ち続けると痛みが増すことになるのです。
そうならないように、起こった事に対して不快な気分があろうとも、できるだけ早い段階で向き合い痛みを感じる事が大切なのです。
そうすることで、「許す」行為を考え始めやすくなります。
もちろん、ひとりでは受け止めきれないような問題に関しては、決して無理せず周りの人たちの力を借りて下さい。
◎自分を許す。
誰かに嫌な思いをさせられた時、その状況をつくってしまった自分を責めてしまうことは少なくありません。
しかし、起きてしまったことはどうやっても変えることはできません。
そして、物事には私たちの力ではコントロールできないことだってたくさんあります。
もしかすると、あの時あなたがあの行動をとっていなければ、あなたが傷つくようなことは起きなかったかもしれません。
でも、起きてしまったらありのままを受け止め、あなた自身を許してあげてください。
自分を責め続けることであなた自身の心をさらに傷つけてしまいます。
してしまったことを認め、辛い気持ちを切り替えなければ、またあなたが傷つくようなことが起きる可能性も高くなってしまいます。
自分を許してあげましょう。
◎経験から学び自分を信じる。
嫌な事をされた経験から、次も同じことで傷ついてしまうのではないか、そうならないように決して許してはいけない、と考えることあると思います。
しかし、許さないことで傷つくのを防ごうとするのは、許さない状態で受ける私たちの心身面へのダメージを思うと、やる価値はないと思います。
それよりも、今後また同じような状況があっても相手にそうさせないようにする為の判断力をその経験から身につけることにエネルギーを注ぐ方がいいのではないかと私は思います。
そうすることで、自分を守る力を信じることができ、また傷ついてしまうのではないか、というような不安を過剰に抱えずに済みます。
◎相手の気持ちを考えてみる。
私たちは不快な気分にさせられた時、その行為や自分の感情に集中してしまいます。
もちろん、それは自然な事です。
だから、その行為や自分の気持ちを十分に感じた後で、相手の立場から相手がとった行動を観察してみてください。
相手があなたを傷つけるような行為をしている時どういう気持ちだったのだろうか、何が相手にそのような行為をさせてしまったのだろうか、その人なりの事情があったのではないだろうか、など相手の状況や気持ちを思いやりをもって考えてみてください。
そうすることで、あなたに許す気持ちが湧いてきやすくなります。
人には色々な事情があり、感情があり、考えがあり、それらが重なり合って行動になります。
それらを知ろうとするだけでも相手やその行為への見方が変わってきます。
あなたの気持ちを癒すために、相手側の立場で客観的に物事をみることは大切なことなのです。
「許す」ことは傷つけられた者にとって簡単な事ではありません。
しかし、恨みや怒りを持ち続けることはあなた自身を傷つけ続けることになります。
もしあなたが許せないことで苦しんでいるのなら、「許し」は自分のためだと理解し、少しずつできることを始めてみてください。
悔しいですが、あなたの心を軽くできるのは、傷つけた相手ではなくあなたにしかできないのですから。
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